『ギイ・ブルダン』
アリソン・M.ジンジャラス
ファイドン 3129円(税込)
ブルダンの写真を知ったのは、70年代のこと。シャルル・ジョルダンのシュールでエロチックな靴の広告だった。写真は、「物語」と「欲望」を最もよくあつかい得る魔法だと思う。ブルダンは、その見事な使い手だったが、気づいたら、91年にすでに死んでこの世を去ってしまっていた。彼の写真は生々しく体の中に残っているのに、彼のことはまるで知らない。おそらく、僕のような人は、たくさんいるにちがいない。写真美術館で、彼の回顧展があり、カタログで初めて、彼のセルフポートレイトを見た。そこには、眼鏡をかけた暗い青年が写っていた。そして、彼が『VOGUE』で30年間にわたり、毎月写真を発表しつつも、自分のクレジットは入れて欲しがらなかったというエピソードや、彼がマン・レイの弟子だったと知って驚いた。SEX、暴力、嫉妬、秘密、そして、覗き見。ブルダンは、ファッション写真・広告写真の中で、彼の魔法を生成した。甘美な夢魔。しかし、僕が一番惹かれたのは、彼が撮影の時使ったポラだ。イメージテストのための映像は、折られ、トリミングが検討される。本来はそれは捨てられるのだが、生き延び、展示されていた。モデルの顔は折られ、誰であるかはカットされる。なんてぞくぞくする写真なんだ!!