『at Home』
上田義彦
リトルモア 4725円(税込)
何度かの引っ越し、出産、微笑み、愛犬・愛猫との暮らし、そして死別。季節はいくつも過ぎ、娘たちは、植物の芽が緑色の葉にかわるように、瞬く間に育つ。写真家・上田義彦は、多くの仕事で体におぼえさせ続けてきた技術や写真感覚のすべてを、ファミリーフォトへ捧げた。いやこれは、映画なのだ。妻・桐島かれんと子どもを軸とした、映画。ラルティーグ、ジャン・ルノワール流の甘い生活の映画。10年の歳月の中、ライカによって撮られたモノトーン・スティール。それは、上田家のファミリーアルバムなのに、なぜそれを見る者に、「それ以上のもの」を感じさせる。それが、この写真たちの「小さな奇跡」である。忘れられぬ名作映画のように、この写真集を見る他者にとっても、忘れ得ぬものとなるだろう。僕は、ふと『ベルリン・天使の詩』を思い出す。天使だった頃はモノクロで、人間界の者となると世界はカラーになる。この写真集に時折あらわれるカラー写真は、うつろいやすいが、それ以上に、生きることのよろこびがあふれている。
上田さん、おめでとう。あなたはすばらしい「写真人生」を生きています。