『Shapes of Blooming』
鈴木親写真集
treesaresospecial刊 3885円
写真家・鈴木親君の新しい本が出た。贈ってくれたので、すぐさまページを開き、ていねいに見る。雑誌『インビテーション』で写真集の連載をはじめるので、その第1回目に書くことにする。こんな文章を書いた。自分でも気に入っている。
よく、花咲く季節がくるたびに想うことがある。それは、人が足を踏み入れることのない山奥に、誰のためでもなく、ただ咲いている花の美しさのことだ。
そのように、すべての生は孤独で、それは花であれ人であれ同じことであり、だからこそ逆に、見つめられることは愛であると言ってもいい。植物も、人も、動物も、いやモノでさえ、日々見つめられるだけで輝くのだ。
鈴木親の写真を見るたびに、これは、そんな「見ることの魔力」を写真にとじこめたものだという感慨が深い淵からやってくる。彼の写真の影は濃く、それは宇宙空間の絶対零度の闇とつながっている。その分、光の中に立つ、かげりある微妙な表情の人物たちは、それが誰であるかは問題ではなくて、見知らぬ他者なのに、鈴木親の写真術により、記憶の底に棲みついている人のように思える。僕らの生は、うたかたで、隣にいる人はたしかに友人なのだが、歴史の中で死んでしまった多くの未知の面影をも有しているのだろう。
鈴木親の新しい写真集を見ている。何度も見る。でもその不思議な美しさの謎は、少しも消えはしない。