ボーントゥービーブルー。UAが歌っている。8月9日、日比谷公会堂。菊地成孔はめずらしく寡黙だ。ライブは本当にすばらしかった。ブラボー!! 記念に菊地訳のブルーの詩を書き写しておこう。
あなたに出会ったとき世界はキラキラ輝いていたけど
あなたが去りカーテンがおりてしまうと
笑おうとしても
何にも可笑しく感じなくなってしまった
世界があせたパステル画みたいに
色を失ってしまって
でもこれでもあたしは幸運な方だと思う
あなたを愛する悦びを知ったんだから
これ以上望んだらばちが当たるかもしれない
だってあたしはブルーに生まれついてるんだから……
いやちがうよ、ブルーに生まれついてるのはあなたじゃなくて、オレだよ。治療が必要なのは、男の方さ。このあいだ京都の吉田屋でメシを食ったら、料理をはこんでくれる女の子が、スリップノットのTシャツを着て、片腕だけアブストラクトな刺青入れて、とんがった歯を見せてゲラゲラ笑ってた。活ダコと水ナスがうまかった。そのあと行きつけのバーへ行ったら、オレがひそかに好きな女がいて、ニュージーランドに旅に出るからそこから手紙を出すわと言い、女たちよ、あんたらは、みんなたくましいったらありゃしない。ブルーなのは男、ブルーなのはオレの方。
富本健吉の陶器を京近美でみた。ラテン系でも中国でもない透明な明るさにちょっと救われて治癒されたけど、まだ治らなくて、キスされたくなって、でもかなわなくって、しょうがないからMETROへ行って、ジム・オルーク+恐山+メルツバウで厄よけして寝た。翌日はオレのブルーなブルーな誕生日で、四条河原町のOPAの屋上にこっそりあげてもらい、一カ所から全部の送り火を見た。東大文字、法、妙、船形、西大文字、鳥居。もえあがる火の文字。さようなら、やさしい、死んだ女たち。オレを守ってくれよ、おねがいだ。
送り火が終わっても、夏は終わらない。
東京。
もらった“くるり”のベストを聴いている。それから、シコ・ブアルキの新作「カリオカ」と、そしてまたCURE JAZZ。
オランダのA MAGAZINEは、一冊まるまるUNDERCOVERの特集号で、見てるうちにブルー度が、ガンガン増してゆく。最近見た雑誌で、一番面白かった。日が射したって、そこは暗黒。ジョニオにインタビューしたくなる。
ボーントゥービーブルー。
ボーントゥービーブルー。
52才の、夏の憂い。