『In Memory of Himself』
Christer Stromholm
Steidl Publishing刊
その出会いは、とても運命的だと思った。11月中旬、パリへ行った。それは今年10年目になる写真のアートフェア「パリフォト月間」を見るためだ。この数年間、僕は世界中のアートフェアをまわっているけれど、名高い「パリフォト」は、初めての体験。アジェやブラッサイなどのヴィンテージプリントからコンテンポラリーフォトまで、充実したブースをめぐるのは実に快感だった。しかし、それ以上に収穫だったのは、フランスではなく、ノルディック北欧の写真家との遭遇である。クリステル・ストロンホルム、アンドレアス・ピーターソン、ヨハン・エグストローム。とりわけストロンホルムの写真と、彼の生涯をさまざまな写真家が撮った『In Memory of Himself』は感動的だった。彼は長い人生の間、さまざまなものを撮り、そして撮られた。ピーターソンも、エグストロームも教え子たちであり、ストロンホルムを撮っていた。写真は、ますます重要なアートのポジションを得てゆくだろう。しかし、「写真=人生」という巨大なものに向かうことこそ、それ以上に重要なことだと思う。彼を知って僕は、はじめて、「長生き」も悪くないなと悟った。