『Bloody Moon〜うまれるまえみたひかり〜』
野村恵子
冬青社刊/3360円(税込)
沖縄の聖なる自然、そしておそらく、さまざまな場所で撮られたであろう女たち。それらは、ともにエロティックに共鳴しあう。
静かで、淡々とした佇まいの写真集なのに、ページを繰るたびに体の中がざわつくのだ。6年をかけ、撮り続けられた写真の枚数は、もちろんもっともっと多かったにちがいないのに、しかしここには、削ぎ落とされ、静かだが、深く、そして激しい写真のみが厳密に選びとられている。作為では撮ることのできない写真の質。丁寧に愛撫し続けているうちに、やがてやってくる官能の高揚と同じ質。それが、これらの写真にある。写真は、記録したいから発達したのだけではないと思う。「モノ」が「光のかたまり」であることは、写真に撮るとよくわかるし、そのことがわかることが快感だから発達したのだと思う。光へ向かう官能。それが写真だ。
だから、この写真のすごいところは、沖縄という自らの血のモチーフを選んでいること以上に、「官能への写真の回路」をきっちりと掘りあてたところにある。おめでとう野村さん、あなたも、あなたが撮ったこの写真集も、ほれぼれするほど色っぽい。