『MASQUERADE』
澤田知子
赤々舎/2,625円(税込)
澤田知子は、実に「ラブリー」な人である。そしてその写真は、実に「ラディカル(根源的)」である。先日僕は、KPOキリンプラザ大阪で、彼女の新作写真展のプロデュースを手がけることができた(7/15〜9/3まで)。木村伊兵衛賞とICP新人賞をダブル受賞し、この春にはN.Y.での初個展も成功。現在、N.Y.のISCPでアーティスト・レジデンスを行い、いよいよ本格的な国際舞台での活躍が始まろうとしてる。さて、今回の大収穫は「顔」。澤田=コスプレ写真と思われがちだが、今回の成功は、写真の根源《ラディカル》である「顔」に集中したことだ。この写真集に結実した「ホステス」姿の「MASQUERADE」をはじめ、初の映像作品「cover/Face」「Appearance」、それらすべてが「自分の顔」を素材に、「顔」と「写真」のあり様を追求している。
それにしても、澤田さんの写真は、「自己顕示」をしているにもかかわらず、エゴを感じさせない不思議な力に満ちている。それはなぜなのだろうか。笑えてくるし、みな元気にさせられる。それを僕は、「愛の写真《ラブリー》」と呼びたいと思うのだ。これは、第2期に突入した澤田知子の、最重要の写真なのである。