『スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945-1950』
レイナー・クローン著
ファイドン刊 8379円(税込)
予感というものは恐ろしい。新年そうそう何か映画を見直そうと思い、スタンリー・キューブリック監督の『時計仕掛けのオレンジ』を見た後、本屋へ行ったら、何と彼の「写真集」が出ていて本当に驚いた。彼が監督になる以前の20代前半、1945年から50年まで、アメリカの雑誌『ルック』でプロの「写真家」として活動していたとは! この写真集の編者レイナー・クローンは、監督本人さえも、もはや「行方知らず」だったネガを、執念で探し出した。その総数12000枚。彼はそれらを「都市写真」「エンターテインメント」「セレブリティ」など分類・構成したが、中でも注目すべきは「人間の行動」。動物園で「サルを見る人たち」を考察したり、「初めて鏡に映った自分を見た幼児」なども撮られている。人間観察、そして演出へ。「強度あるイメージ」を創出することにおいて、キューブリックこそ特筆すべき存在だと僕は思う。この本の序文を、今最も重要な現代写真家ジェフ・ウォ−ルが書いていることでもわかるように、「写真」にとって、おそらくキューブリックの写真はその「起原」のひとつになることは間違いないと思う。必見。