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『彼女たちは小説を書く』
(2001年・メタローグ)
この街で生きゆくには、ますます「物語」が必要になっているように感じる。国も社会も家も学校も男も女も、もうあらかじめあった「物語」を失ってしまった。様々な機能不全があり、欠けたものをケアしてくれる力に包まれたコトバが欲しくても誰も使えない。彼女たちは、小説を書く。価値の航路図のない海で、末期的な消費社会の速度の中で、しかし見事に「物語」を綴る「作家」を僕たちが持っていることは驚くべきことだ。僕は、僕の好きな小説が「彼女たち」の手で、この時代にどのように生み出されたのか、その営みをただインタビューして書きとどめたいと思った。この本を読んでくれて、書くことのヒントを見つけてくれる多くの「彼女たち」がいることを僕はひたすら祈っている。そして今は見ぬ「彼女たち」の物語にまた会える喜びを祈っている。
インタビュイー——
柳美里/吉本ばなな/川上弘美/赤坂真理/山田詠美/中上紀/江國香織/松浦理英子