早川タケジ作品集
『paradis, paradis』
(2002年・リトルモア)
画家であり、またデザイナーである早川タケジが、スターたちの個性を発見し、最も輝かせた衣装写真の数々を年代順に収めた、ゴージャスで貴重な記録。
沢田研二さんのCDジャケットやポスター、年に一回のACTシリーズの公演の5年分の衣装を始め、幾多の豪華スターたちに提供した衣装、それにまつわる早川氏のコメントなども合わせ、他に類をみない豪華絢爛な一冊になりました。
早川タケジ(はやかわ・たけじ)
東京生まれ。1965年頃より「メンズクラブ」「平凡パンチ」のモデルとして活躍。同時にセツ・モードセミナーで絵の勉強を始める。以後、数々のイラストコンテストで多数の金賞を受賞。独自の色彩感覚と自在な造形感覚で1973年より現在まで沢田研二の衣装デザインを担当。特に「TOKIO」をはじめとする衝撃的なデザイン表現が有名。その他、橋本治文庫シリーズのデザインや林真理子「ファニーフェイスの死」のイラストなどのエディトリアルから、ファッション、広告など幅広く活動中。近年では、コラージュでタブローなどアーティスティックな創作活動に活躍の場を広げ、生来の感性を生かし独自の世界を築いている。1998年「アートファッション20世紀ファッションイラストの巨匠たち」展で日本人で唯一選出される。1999年より講談社「FRaU」誌上で「早川タケジのジャルダン・デ・モード」を連載。
「アウト・オブ・イマジネーション」
僕はよく、ある作品を前にした時、どのようにイマジネーションが働いたのかを夢想する。それは、想像力やイマジネーションなどというコトバなど存在しない、古代の寺院の装飾であったり、宗達や永徳のように人物像すらほとんど分からない人であったりすることが多い。何を見て、何を着想し、どこへ行こうとしたのか。イマジネーションがどう動いたか。それが、遠い過去であるのに、現在の我々よりはるかに強力であることに唖然とさせられる。
破ること。イマジネーションに最も重要なのはこのことだと思う。いかに破り、乱調と戯れ、傾き、宇宙の親和力を破ってアシメトリーへ向かえるか。残酷なまでに移ろう時間の経過のなかで、小さな調和よりエクストリームなものしか生き残ることはできない。 想像を破り、遠くへ行こうとする者こそ、永遠の美の国の住人である。
早川さんの仕事は、僕ら80年代を青春として生きたものにとって、最も強力な毒の一つであった。僕らは、早川さんの破格の美学にアディクトし、もっともっと強いイマジネーションのドラッグが欲しくなった。確実に早川さんの怪物的なイマジネーションによって遺伝子を組み換えられたのである。僕はこのエクストリームの王様に最高のオマージュを捧げる。
さあ、この本を手に入れるがいい。これは、想像力を破って遠くへ行くための禁断の書なのである。
後藤繁雄 (編集者/クリエイティブ・ディレクター)